歌曲&その他の予習

自慢したくなる今回の鑑賞計画

ふふふ!驚くな!

今回は何と、ジークフリート、ムツェンスク、カヴァパリ、さらにベトミサ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ、それにプレガルディエン、サビーヌ・ドゥヴィエルという超豪華なラインナップとなっているのだ!

自慢したいのだが、このカタカナ文字を読んで「おおー!!!!!」と反応してくれる人など、この世にほとんどいないのが現実。ほとんどの人間にとって、このカタカナの文字列は意味不明なのだろう。怪しげな呪文に見えるのかもしれない。ああ、オタクの人生は退屈だ。この世はつまらない。

まあ、気にするな!

気を取り直して、豪華ラインナップを一人で存分に自慢しようではないか。まずは個人的に重点ジャンルである歌曲から。

プレガルディエン父の歌曲リサイタル

ゲーテによる詩を取り上げた歌曲プログラム。朗読を挟みながら歌を聴くというプログラムのようだ。

予習してみると、少しだけ知っている曲があったが、まだ知らない曲が多い。「魔王」や「ガニュメート」は、有名なシューベルト版ではなく、敢えて「魔王」はカール・レーヴェ作曲、「ガニュメート」はフーゴ・ヴォルフ作曲の歌が選ばれている。シューベルト好きの私としては、特に「ガニュメート」はシューベルト版を溺愛しているので、ちょっぴり残念だが、もしかしたらアンコールで歌ってもらえるのではと期待してみる。予習で聴いたイアン・ボストリッジが歌うヴォルフ作曲「ガニュメート」は指揮者アントニオ・パッパーノがピアノを弾いているが、このピアノが想像以上に美しく繊細な音色。

クリストフ・プレガルディエン Christoph Prégardien は日本でもお馴染み。私も何度か生鑑賞した。去年秋はトッパンホールで素晴らしいシューベルト「冬の旅」を心の底から満喫した。

今回のプログラムの中で最も気に入ったのは、最初の曲「トゥーレの王」Der König in Thule である。亡き妻の形見である盃を大切にする王様。王様の涙は盃にポロリと落ちた。涙と一緒に王様は盃から水を飲む。年老いで死期を悟った王様は財産を家来たちに分け与えたが、盃だけは誰にもあげなかった。最後の一杯を飲み干して、盃を海に放り投げ、盃が海に呑まれていくのを呆然と眺める王様。絵になるストーリーだ。早速だが絵を描いてみた。M Suzuki のデザイン作品サイトでご覧いただければと思う。

「トゥーレの王」はシューベルト版とリスト版が歌われる予定。ピアノが美しいリスト版の歌曲も素敵だが、ここでは素朴なシューベルト版を紹介しよう。

それから、グリーク作曲の「薔薇の季節に」 Zur Rosenzeit(もちろんこれもゲーテの詩、ただし原題はWehmut)も思いっきりメランコリーで繊細。歌のメロディーも綺麗だし、ピアノパートも美しい。歌とピアノがお互い語り合うデュエットのようになっている。女声向きの曲のように思うが、果たしてテノール歌手プレガルディエンはこれをどう歌うのだろうか。

サビーヌ・ドゥヴィエルの歌曲リサイタル

日本でもお馴染みのプレガルディエンと比べると、サビーヌ・ドゥヴィエル Sabine Devieilhe は、希少価値がより高いと言えるのではないだろうか。私が知る限り、まだ来日していないのではと思われる。アスミック・グリゴリアンに続き、サビーヌ・ドゥヴィエルに会えるとは!最近の私は歌姫運がめっぽう強い。9月には東京でソニア・ヨンチェヴァのトスカを聴く予定だ。同月にはメゾソプラノ歌手Lea Desandreのデュオリサイタルも鑑賞予定。

フランスのソプラノ歌手サビーヌさん(苗字は覚えにくいのでこう呼ばせていただこう!)は、コロナ禍で私がオンライン鑑賞した数々の動画に出ていた。日本に閉じ込められて落ち込む私が非常にお世話になったアーティストの一人である。例えば、コロナ禍の初期の頃、彼女はピアニストのアレクサンドル・タローとデュエットをやっていた。エレガントな雰囲気たっぷりで。改めて調べてみるとサビーヌさんは何とバロックアンサンブルの指揮者ラファエル・ピションの奥様でもあるのだった。ピション率いるピグマリオンと名だたる若手ソロ歌手たちが参加したバッハ「マタイ受難曲」にサビーヌさんも参加していた。

ご覧の通り、とびっきりチャーミングな方なのだが、歌も抜群に上手い。非の打ち所がない。

ウィーンでのプログラムは「公演が近づいてから発表する」と書いてあったが、待てど待てど発表されない。そんな時、スイスのチューリッヒ歌劇場のスケジュールに同じ歌手とピアニストの公演を発見。おそらく同じプログラムで欧州ツアーをやっているのだろうと想定して、チューリッヒのプログラムを予習した。先ほど(5月31日)楽友協会ウェブサイトを確認したところ、ようやくウィーンのプログラムも発表されていた。ざっと見てみたが、チューリッヒと同じと思われる。良かった。

アルバン・ベルクの歌曲という世界を発見した!

気に入った。特に Spielleute、Vielgeliebte, schöne Frau、Sehnsucht II 3曲のに一目惚れ(一聴き惚れ)してしまった。ベルクの歌曲を初めて知った。ベルクが無調音楽に向かう前の歌曲は、まるでシューベルトのようだ。Spielleuteの詩の原作者はノルウェーの作家・詩人のイプセンだと知って、ますますこの歌が気になる。Spielleute は日本語にすると「吟遊詩人」と訳されたりする。「俺が芸を極めている間に、好きな女の子は俺の兄貴と結婚しちまった・・・」と言って歌は終わる。この直後に何か事件が起こりそうな予感がしてちょっと不気味だ。(歌では詩が一部省略されている?ようだ。)あまり録音されていないようだ。下の動画は男声版。

ついでに、プログラムに入っているモーツァルトの詩のない歌も素敵なのでぜひ聴いてみてね。歌っているのはサビーヌさん。

セルゲイ・マーロフのヴィオロンチェロ・ダ・スパラ

数年前、私よりはるかにクラシック音楽に詳しい方に教えていただいた演奏者である。「きっと気に入るはず」と言われたのだが、本当にそうだった。何しろ彼がヴァイオリン、ヴィオラに加えて演奏する楽器ヴィオロンチェロ・ダ・スパラの姿に劇惚れした。「私の顔をよく見て!」と言わんばかりにドーンと正面をお客様に向けたインパクトある姿だ。そして、この楽器がよく似合う演奏者である セルゲイ・マーロフ Sergey Malov は既にこの古楽器の宣伝塔である。日本にも来日しているが、まだ生演奏を聴けていない。ウィーンで聴けるなんて幸運だ。

演奏プログラムはヴェーベルンの小曲とベートーヴェンの大曲を組み合わせている。ヴェーベルンは気にせず、ベートーヴェンに集中しよう。チェロ・ソナタ Op. 69もヴァイオリン・ソナタ Op. 23 もよくCD等で聴いたので、それほど予習に力を入れる必要はないと判断した。チェロソナタの方をヴィオロンチェロ・ダ・スパラで演奏すると思われる。

セルゲイ・マーロフと楽器ヴィオロンチェロ・ダ・スパラについては、下のバッハ動画をご覧いただきたい。

オーケストラのベートーヴェン・プログラム

上記のプログラムに加え、オーケストラ公演を鑑賞予定。ウィーン室内管弦楽団で、指揮はまだ20代の若いヴァイオリン奏者。ウィーン生まれ、アルメニア育ちで、父はイラン出身のアルメニア系の指揮者という興味深いバックグラウンド。

「ベトミサ」は有名な「ミサ・ソレムニス」ではない。「ミサ曲」Messe C-Dur op. 86 für Soli, Chor und Orchester である。失礼ながら、このような曲があったことさえ知らなかった。もう1曲は交響曲第5番「運命」となっている。「ミサ曲」は予習として何度か聴いたが、「運命」は予習無しで鑑賞しようかと思う。大昔に知った曲でありながら、生演奏はもしかしたら初めてかもしれな。(あったとしても記憶にないのだから。)あるいは、出発までに時間があればベルリンフィルのデジタルコンサートホールの過去映像でも観てみようか。

以上が今回の音楽旅での鑑賞予定だが、鑑賞したかったけど日時が重なっていて諦めた公演もいくつかある。

まず、ウィーン国立歌劇場のモーツァルト「フィガロの結婚」は、11年前に鑑賞した作品ではあるが、今回の演出はベルリンのコーミッシュ・オーパーで音楽監督を務めるオーストラリア人バリー・コスキーが演出をするという。興味はあるのだが、知らない曲を含むベートーヴェンのオーケストラ公演を優先した。バリー・コスキーはキャバレーのピアノ弾きのようにピアノを弾きまくれる才能まで持っている。コロナ禍で無人配信した女性歌手とのデュエットはカッコ良かった。先日観た世界のワーグナーファンを取材したドキュメンタリー映像にも彼は出ていた。ワーグナーオペラも演出するとは知らなかった。バリー・コスキーという人物には非常に興味を持っているのだが、ただ・・・ 彼のオペラ演出は、男性歌手にバレリーナの格好をさせたりというものが多い。個人の趣味を反映した私にとってはちょっと意味不明な演出スタイルかな。

なんと、今回は楽友協会の黄金ホールにも行かない。楽友協会ではブラームスホールでサビーヌさん公演を鑑賞するだけとなる。気になるのは指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロトが率いるLes Sièclesの公演。日曜と月曜にあるのだが、どちらもオペラを優先した。水曜は指揮者ダニエル・ハーディングとヴェーベルン交響楽団(知らない交響楽団だが・・・)の演奏があり、ソリストでヴィオラ奏者アントワン・タメスティが出る。観たいけど、この日は歌曲を優先する。木曜には大御所マウリツィオ・ポリーニのピアノリサイタルがあるのだが、同じ日に上演されるアスミック・グリゴリアンが出る「カヴァパリ」を選んだ。さらにあと1泊すれば、クリスティアン・ティーレマンが指揮するシュターツカペレ・ドレスデンを聴けたのだが、さすがにこれ以上延泊はできない。残念だ。

前回行かなかったアン・デア・ウィーン歌劇場、フォルクスオーパーもスケジュールが合わず、また今回も行けない。

以前、オンラインでドイツ語の発音指導をしてくれたロンドン在住の舞台役者のドイツ人によると、ドイツ語圏の舞台演劇の中心地といえば、ドイツよりオーストリアのウィーンだとのことだった。確かにGoogle Map でいくつか劇場があることが分かる。音楽公演と同じようにほとんど夜公演なので結局お芝居も観られない。シェイクスピア劇など、既に知っている作品であれば問題なく鑑賞できると思うので、いつか鑑賞したい。足を伸ばして、ハイドンが活躍したエステルハージの宮殿でも音楽鑑賞したいところだが、こちらもスケジュールが合わず断念。

自分の選んだ公演を楽しみたい。

 

上部へスクロール